ふすまのスキマ

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【教育】子供の学習を「習慣化」させるために その3【脳をだます】なぜスモールステップが有効なのか

 前回のブログ『子供の学習を「習慣化」させるために その2』では、「アンカリング」のお話をさせていただきました。少し復習をします。

 前回までの復習:アンカリング

アンカリングとは、

「外的な五感からの刺激情報をきっかけに、特定の反応や行動、感情が引き出されるプロセスを作り出すこと」

です。

 ・夕食後に自分の部屋の机で勉強する

の場合、

「夕食後(時間アンカー)」+「自分の部屋の机(場所アンカー)」により、「勉強する」という行動を引き出す、というように、「船を固定する錨(いかり)」であるアンカーが「勉強する」という行動を「つなぎ止めている」ことをアンカリングといいました。

 ・(夕食後+自室の机) ~~~~~>(勉強を開始する)

 

 しかし、子供は、他のことが気になったりして、なかなか次の行動「勉強」に移れないことが多く、「さあ勉強を始めるぞ」という強い刺激、きっかけとなる「独特なジェスチャー」を「身体的アンカー」として追加しました。野球のイチロー選手の「バットを垂直に構える」ルーティーンのようなものです。
 「普段はあまり行わない動作」かつ「少し刺激のある」もの、かつ「手や指のちょっとした動きだけで完結する簡単なもの」(鼻をつまむなど)がアンカリングを発動させるのに有効で、

「晩ごはんを食べたら、自分の部屋に向かい、机に座って、頭に鉛筆をのせてから勉強にとりかかる」を「毎日繰り返す」

ことにより、集中状態を保ってアンカー行動を発動させる、という具体例を挙げました。

 ・(時間アンカー+場所アンカー+身体的アンカー) ~~~~~> (集中モードで勉強を開始)

 「身体的アンカー」は、仲の良くない二人の「仲介役」になり、あいだを取り持つのです。

 

 ここまでが前回の復習になります。

 

 今回は、「それでもやはり、子供にとって習慣化や継続することって難しい」ことなので、「継続のためのちょっとした工夫や考え方」のお話をさせていただきます。
 これまでのアンカリングの話を少し別の視点から考えてみます。

 

 意識ではなく行動を変える

 アンカリングのきっかけ作りとして、「耳を触る」「こぶしを握る」「鼻を触る」などの「身体的アンカー」を追加するお話をしました。これは、「今までとは違った独特な行動を追加」し「行動を変化」させ、さらにルーティーン化することにより、今までリンクされていなかった次の行動「勉強」にリンクを作っている、と考えられます。つまり、

 「意識(モチベーション・やる気)を変えるのではなく、行動を変える

ことにより習慣化を促すのです。

 

 新しい刺激への脳の保守的反応

 しかし、私たちの脳は、この行動の変化に敏感です。不慣れなことは苦手なのです。既得習慣の中に新たな行動が入ってくると、

 「あれ?今までとはなんか違うぞ。ヤバいんじゃね。」

危機感を覚え、変化に抵抗して排除しようとします。危険を察知する防衛本能的なものです。新しい行動の習慣化が難しいのはこのためでもあり、新しい知識を覚えることも同様に難しいのは、この脳の抵抗反応、保守的性質のせいでもあります。

 この保守的な性質を持つ脳に「誤認させる」のがルーティーン(繰り返し)による習慣化です。

 

 新たな行動を習慣にとりいれようとすると、最初は脳が、

 「イヤイヤ」

するのですが、無意識に行動できるようになるまで繰り返すことにより、脳は、

 「これって、前からあったヤツかも。」

「だまされ(誤認し)」ます。

 

 まず行動を起こし「作業興奮」状態を引き起こす

 「とりあえず始めてみることが大切だ。」
 「いいから、やってみろ。そのあと考えろ。」

みたいなことをよく耳にします。(ちょっと「昭和っぽい」やつです。)


 これは、『まず「行動を起こす」ことにより、脳内の側坐核(そくざかく)と呼ばれる部位でドーパミンが分泌され、モチベーションが高まり、作業興奮が生じ、行動を持続させる力になる』、という理論に基づいたものです

 

 「ちょっと面倒くさいけど、部屋が散らかってるから、少しだけ片づけようかな」と、軽く片づけを始めると、気づいたら部屋の隅々まできれいに掃除していた

という経験をしたことがあるかと思います。これが作業興奮状態の例です。行動を起こすことで、脳内でドーパミンが分泌され、モチベーションが高まり「作業興奮」状態になり行動が継続するのです。スイッチが入ってハイな状態(ハイ・テンション)になり知らないうちに集中して継続しています。

「始めてみたら意外と気分が乗ってきてすんなりとできてしまった」

というような感覚です。

 

 勉強や仕事にも似たような例があります。

 「勉強したくないなぁ。。。でもやらなきゃ。。。」と、教科書を開き少し読みだすと、気づいたら集中して勉強している

というような経験はありませんか。
 「いざ始めてみると意外とテンションが上がって行動できてしまう」ことがあります。「あまり気乗りしなくても、とにかく始めてみる」のが大切です。

つまり、

「やる気をだしてから、勉強する」のではなく、「勉強しだすと、やる気がでる」

のです。

 「行動がやる気を引き出す」ということを認識するだけでも大きな違いになります。まずは「やることを最優先」にします。重い腰を上げるためにも「鼻をつまむ」などのアンカリングを利用すると効果的です。

 

 Small Step:初動のハードルを低くする

 「まずやってみる」から「習慣化」につなげるためには、『「まずやってみること」が「時間的に短いこと」や、「内容的にも行動的にも難しくない簡単なこと」』から始めてみると、行動開始しやすく、その行動から生まれるモチベーションが連鎖的に次の行動につながります

 例えば、新しく習慣化したい行動を「短い時間」から始め、それを繰り返すことによって、「脳をだます」ことができ、習慣化しやすくなります。

「脳の保守反応→脳に誤認させる→習慣化」の例を以下に示します。
 
 以下、脳のココロの中です。

 「あ、なんか新しいヤツ(行動)来た!ドーパミン、ぶっしゅ―。。。あれ、もう帰った。
  ↓
 「あ、また来た!ドーパミン、ぶっしゅー。。。また、帰りやがった。
  ↓
 「また来たんか!どうせすぐ帰るんでしょ。。。ほら、帰った。
  ↓
 「はいはい、来たか。こんにちは。今日はいい天気だね。ちょっとあがってドーパミン茶でも飲んでけよ。。。え、用事がある?そっかー。じゃ、また今度な。
  ↓
 「おう、お帰りー。」

っていう感じです。

 こうして脳みそ君は、まんまとだまされます「スモールステップ」って、こういうヤツです。スモールステップ君は、小さな成功体験をどんどん積み重ねていきます。そして習慣化するのです。

 

 今度は『スモールステップ君』にも参加してもらいます。

 『こんにちは。私はずーっと前から、あなたの家族です。
 ⇒ 脳:「誰だよお前。知らねーよ。帰れよ。あ、帰った。
   ↓
 『オレだよ。オレ。覚えてないの?
 ⇒ 脳:「また来たのか。知らないって言っただろ。帰ってくれ。。。あ、帰った。うーん。
   ↓
 『ただいまー。』
 ⇒ 脳:「・・・ヒロシ。」

 みたいな感じです。家族になれたら、当たり前の習慣になります

 短い時間だったとしても、いったん習慣として身についてしまえば、あとから内容の難易度や量、時間を増やす、などを変えていくことが比較的容易になります。

「簡単なことから始める」という「Small Step」や「Baby Step(赤ちゃんの1歩のように、小さくはじめる)」は、習慣化の初動の方法として有効なのです。


 最初から「毎日必ず3時間は勉強するぞ」のような、高い目標は避けたほうが無難です。まずは小さな成功体験を積み重ね、「やればできる」と思えることが大切です。


 以下は、勉強開始のための「楽に飛び越えられそうなハードル設定」の例です。とにかく始めることを意識します。

 ・テストで間違った問題だけ解く
 ・解けそうな簡単な問題だけやる
 ・3ページ読むだけにする
 ・5分だけ勉強する
 ・漢字3つだけ覚える
 ・1問だけ解く
 ・教科書を開くだけにする
 ・スマホを隠す(アンカー)
 ・机の上を片付ける(アンカー)
 ・鼻をつまむ(アンカー)

 勉強を習慣化するのが苦手な子供には、「時間は短く、難易度は低く」することがポイントです。例えば「3ページだけ教科書を読もう」と勉強を開始し、1ページしか読めなかったとしましょう。しかし、がっがりする必要はありません。どんな課題でも、それを行う上で最も難しいのが「課題を開始すること」なのです。まずは開始できたことをポジティブにとらえ、また、保護者も、「始められたね」と声をかけてあげましょう

 内容や時間は問わず、とにかく「やること」を「最優先」します。次の日、また次の日、と、スモールステップで簡単なことを習慣化していき、脳に「誤認」してもらいます。ちなみにですが、「作業興奮」状態が発生するのは、行動開始後5分程度と言われています。「とりあえず5分だけやる」と決めて、開始したら、知らないうちにエンジンがかかっているかもしれません。「これならできそう」と思えることから勉強を始めてみましょう。その小さなことの繰り返しが、学習習慣に結びついていくのです

 その3のさいごに

 習慣化するにあたって、最も困難な初動に関して「スモールステップと脳の働き(作業興奮)」という観点からお話してきました。行動心理学の内容も含まれています。
 次回は作業興奮に関連させて、類似性のある考え方や、習慣化のための他の方策などをお話していく予定です。