ふすまのスキマ

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【教育】「子供はなぜ宿題をやりたがらないのか」と「メタ認知」

 「早く宿題やりなさいっ!」
言いたくないですよね。子供も言われたくないですよね。
保護者が言っても、
 「今、やろうと思ってたところだったのにー! やる気が失せたぁ!」
みたいな。
 命令されたり強いられると、そこに「自発性」がないから、余計に学習意欲が下がります。

 子供の勉強に対する学習意欲(モチベーション、やる気)の話をしていきます。この「学習意欲」の種類を、子供も保護者も指導者も「メタ認知して知っておくことを目標とする内容です。

学習意欲(モチベーション)を構成する重要な3要素

1.期待:「子供が目標や課題を『達成できそうだ』と考えている度合い(期待値)」のこと
2.価値:「子供がその目標や課題を達成するのは『自分にとって価値がある』と考えている度合い」
3.環境:「子供の『人的環境の支援』と『物的環境の整備』」

 上記の3つの要素すべてが一緒に作用して子供の持つ「学習へのモチベーション」に影響を与えます。

 

1.期待

  「この宿題、できるかなぁ。」
  「この課題、できそうだ!」
  「ムリ無理むり無理!」

 「期待」とは、「子供が目標や課題を『達成できそうだ』と考えている度合い」のこと。(「動機づけを目的とした認知的アプローチ」における「期待理論」というやつで、「自身の行動の成功可能性に対する主観的な予測」です。)この「期待」というのは「自信」に似ているものととらえてもいいかもしれません。自信がないと判断したことには、やる気がでません。

 例えば、走るのが苦手な小学生に「50mを6秒台で走れるように練習してきて」と言っても、「そんなの無理!」と思ってモチベーションはあがりません。また、走るのが得意な小学生に「10秒台で走れるように」という課題を与えても「簡単だよ」と思って、課題にとりくむ気が失せます。走るのが得意でも不得意でもない小学生にとって「7秒台」だったら「頑張ればなんとかなるも」とやる気がでます。このような「無理!」とか「なんとかなるかも」が「期待」です。

 宿題の出し方も同様で、「個別に最適化した質と量」が望ましいのです。しかも「ちょっと頑張ったらできそうだ」という「ちょうどいい」課題が望ましいのです。

 与えられた課題を前に、子供が「これならなんとか達成できるかも」と思えば思うほど、与えられた課題に挑むモチベーションが高くなります。そしてその後は「子供が段階的に課題をクリアすることができるよう、徐々にステップアップできるよう、課題をさらに個別最適化したもの」にしていく必要があります。

 

2.価値

「この宿題、意味あるの?」
「この100回ずつ書く課題、疲れるだけで時間の無駄」
「この宿題できなくても、生きていけるし」

 「価値」は「その課題を達成したら、自分にとってどのような意義・利点があるかと考えている度合い」のことです。(「動機づけを目的とした認知的アプローチ」における「価値理論」というやつで、「課題に取り組む主観的判断としての価値」と「学習意欲」の関係に着目した理論です。)

 例えば、先ほどの50m走に取り組む際に、「速く走れたらみんなに注目される」とか、「運動会でリレーの選手に選ばれたらカッコいい」とか、「走ることが楽しいしストレス発散になる」とか「いい運動になる」とか、なんらかのプラスになる価値を見出すことができたらモチベーションが上がります。

 課題や目標を達成する主観的メリットが「価値」です。子供がその課題に価値を見いだせば、学習のモチベーションが高まります。

 

子供が学習意欲を見出す価値の種類 】

 課題(対象)に直接起因する「課題内生的価値」と、課題(対象)自体には無関係な「課題外生的価値」の2種類があり、さらにそれぞれに分類項目があります。主なものをあげていきます。

①課題内生的価値
・興味関連価値
「課題対象自体の楽しさや興味」に対する価値です。その課題が「興味深い」と感じるか「つまらない」と感じるか、の価値です。
・実用関連価値
「課題対象自体に内在するに有用性」に対する価値です。その課題が「役立つ」と思うか「役に立たない」と思うか、の価値です。

②課題外生的価値
・自我関連価値
「課題達成による自尊心の向上・維持」に対する価値です。自分に対して「誇らしく思えるようになる」か「失望感を抱く」か、になります。
・報酬関連価値
「課題達成による実際的な利益」に対する価値です。自分が「得する」か「損する」か、になります。
・対人関連価値
「課題達成による人間関係上の効用」に対する価値です。自分が「他者の期待に応える」か「他者の期待を裏切る」か、になります。

 

 まずは、子供が学習の動機付けとして見出す価値を①課題内生的価値なのか、②課題外生的価値なのか、を把握するところから始め、さらにそれぞれにおいて「子供が何に価値を感じているのか」を細分化し、子供本人も指導者も、その価値を認識し、さらにコントロールするという視点が重要になります。

 

 課題自体に関する「課題内生的価値」を子供自身で見出す例として、

 「植物の光合成ってすごいな。もっと知りたいな。」【興味関連価値】
 「織田信長って強いな。なんで天下統一できなかったんだろう。」【興味関連価値】
 「英語を覚えて、外国人と会話したいなぁ。」【実用関連価値】

 などです。


 課題(対象)自体には無関係な「課題外生的価値」を子供自身が見出す例として、

 「課題提出してA評価もらって、友達に勝つぞ。」【自我関連価値】
 「宿題終わったら、ご褒美でケーキもらえるから頑張る。」【報酬関連価値】
 「丁寧に色分けして課題出したら、先生が喜んで褒めてくれるかなぁ。」【対人関連価値】

 などです。

 以上のように、「価値」といっても、様々なものがあるということをまずは理解します。そして、どの子供がどの「価値」を見出す傾向にあるのかを保護者や指導者は把握します。その傾向に応じて指導的立場の人間は子供をサポートしていき、学習意欲を向上させていきます。宿題や課題の「価値」を見出すことは、子供だけでは難しいことが多いのです。そのような場合には、保護者や指導者がサポートします。


 例えば、植物の光合成に自発的に興味を持つような「興味関連価値」を見出している子供に、「課題が終わったらケーキをあげるから頑張って」と言葉をかけても、「ケーキのためにやっているわけではない!」と、かえってモチベーションが低下します。


 また、友達よりも良い点数をとりたい一心で課題に取り組んでいる子供に、「もっと深く掘り下げて興味をもって勉強しなさい」と言っても、「それよりも点数とるために効率的に勉強したいんだ!」と反感を抱かれてしまいます。


 指導者は子供の「価値を見出す傾向」を把握したうえで、適切なサポートをする必要があります。また、上記の例のように「指導者側からの価値の押し付け」は、あまりよろしくありません。子供が自発的に価値を見出すよう導いていく工夫が大切です


 例として「なぜ宿題をする必要があるのか?」とか「この課題が将来どんな意味を持つと思うか?」など、「子供に価値に関して質問をする」ことにより「主体的に価値を見出してもらう」という方法があります。さらに、学年が変わるときや夏休み前など、区切りの時期に「定期的に子供に問いかける」により、子供たちが自分自身が改善したいと考えていることや、勉強したいと思っていることを見つめ直すことにもなります。また、指導者側も問いかけることにより「子供のことを知る」ことができます。

 

3.環境

 子供は、学習環境が「今の自分に適した良好な状態」であると感じると、学習意欲が高まる傾向があります。子供の学習環境には、物的環境と人的環境があります。


【物的環境】

  「きれいに片付いた部屋は、なんか気分が上がるー」
  「机の上がちらかってて、やる気がでないよー」
  「自分の部屋だとスマホとかゲームとか誘惑が多いから、図書館に行こう」

【人的環境】

  「ひとりで勉強してると息がつまるから、友達と一緒に勉強しよー。」
  「その友達にわからないところを教えてもらおう。」
  「親にきいても、教えるのが下手。全然わかんない。」
  「頑張ってできるようになったら、教えてくれた先生は喜ぶかなぁ。」

 集中して学習できる物的環境や、気分転換に勉強場所を変えるなどは、学習意欲に関連性が深いものです。整理整頓された環境や、学習書籍や参考書が手に取りやすい環境整備など、ほんの少しの環境の違いも気にしたいところです。

 指導者や保護者などの人的環境は特に重要です。学ぶ意欲をはぐくむ上で、指導的立場の人間は、子供にとって身近な人的環境です。

  「先生は、自分のよいところを見てくれている」
  「親は温かい目で見守ってくれている」
  「自分に期待をかけてくれている」

と思えることが、学習意欲の土台となります。

  「話を真剣に聞いてもらえる」
  「間違ったこと言っても笑われない」

など、子供ひとりひとりに敬意を払い、大切に受け止め、子供を生かし伸ばしていこうとする指導者・保護者の態度は、子供たちに伝わります。


 子供は本来、「もっとできるようになりたい」などの向上心・学習意欲をもっています。子供の姿を丁寧に観察し、子供を肯定する前向きな言葉かけをしていきます。
 そして、親や指導者自身が様々なことに好奇心をもち、学び続ける姿を通して、子供たちに学ぶ意義を伝えていきます。自らが関心をもっていること、読書や経験から得たことなどについて子供達に伝えていくのです。

 

まとめ

 学習意欲(モチベーション)を構成する3要素「期待」「価値」「環境」すべてが一緒に作用して子供の持つ「学習へのモチベーション」に影響を与えます。
 子供が高すぎる目標を設定し、その目標に高い「価値」を見出したとしても、「自分が目標を達成できる」という「期待」が持てなければ学習意欲はそがれます。また、適切な物的学習環境や人的環境としての指導者のサポートも必要な場合があります。
 子供が自発的に個別の目標を設定し、その意義を見出し、子供に寄り添った指導者のサポートをするためにも、これまで述べてきた学習意欲に関して、子供も指導者も「メタ認知」することが大切です。