ふすまのスキマ

アクティブなとき、そうでないとき、ココロの心太(ところてん)

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【教育】子供の学習を「習慣化」させるために その2【アンカリング】

 前回のブログ 『子供の学習を「習慣化」させるために その1』で、『「if-thenルール」による習慣化』というお話をさせていただきました。少し復習をします。

【前回の復習】

・「食事をとった後は歯磨きする」
・「夜9時になったら入浴する」

のように、

「条件if」があると次の(then)行動を起こす「きっかけ(trigger)」となり、その「条件if」を習慣化すれば、その後の行動も習慣化しやすくなる

ので、その規則的習慣に

 ・「夜7時になったら勉強する」

という「勉強する時間」を組み込むことにより学習の習慣化を目指します。
 しかし、

規則正しい生活のリズムが整っていないと、勉強する時間も毎日変わってしまい、「if-thenルール」が固定できず、習慣化が難しくなる

ので、

「規則正しい生活」は、「学習の習慣化の枠組み・土台」になる

という内容でした。

 まとめますと、

時間という条件if(=きっかけtrigger)を習慣化(固定)することにより、その後(then)の行為も習慣化しやすくなる

ということでした。

 

(以下、前回の続きになります。)

 

「if-thenルール」のつづき

 ここまで「if-thenルール」など、少し堅苦しい表現を使い過ぎたので、平易な表現にすると、

「既に習慣となっている行動に勉強をくっつける」

ということが言いたかったのです。

 ・晩ごはんを食べたら勉強する
 ・お風呂から出たら勉強する
 ・朝起きたら30分勉強をする

というように、「最初の一歩」は「すでに習慣になっている行動とセットにしてしまう」とスムーズに勉強という行動に移りやすいのです。

 一連の流れとしてスムーズに次の行動に移す際、ポイントが3つあります。

 

Point1:すでに身についている習慣の「最後の行動」と、新しくとりいれたい習慣の「最初の行動」をくっつける

 ・晩ごはんを食べたら勉強する

を考えてみますと、

 夕食の最後:「ごちそうさまでした」と食卓を離れる
 勉強の最初:「自分の部屋に行って机に向かう」
 ⇒「食卓を離れたら自分の部屋に行く

 このようにセットにすると、既得の習慣の後、一連の流れとして次の行動に向かうことができ、これを繰り返すことにより、習慣化しやすいのです。

 

Point2:勉強の直前は、勉強に移行しづらい行動をしない

 ・晩ごはんを食べたらテレビを見てから勉強する

を例に挙げると、

 夕食の最後:「ごちそうさまでした」と食卓を離れる
 ⇒リビングに行ってテレビを見る
 勉強の最初:「自分の部屋に行って机に向かう」
 =「テレビを見た後自分の部屋に行く

となります。

 この行動の順番ですと、

 「夕食おいしかったー。ちょっとくつろいでテレビ見よう。あー。もうすぐ7時(=時間トリガー)だ。部屋に行って机に向かわなきゃ。。。でももう少しテレビ見たいなあ。。。

となる可能性が高くなってしまいます。

 もし、この「夕食後、テレビを見てから勉強する」という流れになっていたら、スケジューリングを見直したほうが習慣化しやすいです。

 ⇒「夕食後、勉強してからテレビを見る

など、リスケして下さい。習慣化には、勉強時間を組み込む「時間的位置」も大切なのです。

 

 ここまでは、時間が固定された既得の習慣行動をきっかけ(トリガー)にして、次の勉強という行動につなげてきました。さらに、「場所」も固定してトリガーとしていくと習慣化が促進されます。(今までの例に、場所トリガーも少し入っていました。)

 

Point3:時間だけでなく場所も固定する

 ・通学時、電車に乗ったら英単語帳を開く
 ・寝る前に布団に入ったら、英語のリスニングを聞く
 ・放課後に図書館で1時間読書する
 ・夕食後に自分の部屋の机で勉強する

 「いつ、どこで」勉強をするのかという行動パターンの固定と反復により、脳に習慣として認識させることで、勉強もその習慣的一連の行動だと脳に意識させ、可能な限り無意識の当たり前の行動にしていくのです。

 ・朝ごはんを食べたら、洗面台に行って歯を磨く

みたいなものです。ほぼ無意識の習慣的一連行動ですよね。

 このように時間と場所の行動のパターンを固定すると、それがトリガーとなり、勉強は習慣化しやすくなります。

(本当は前回ここまで書きたかった。ここまでが一区切りです。)

 

アンカリング(anchoring)

 アンカリングとは、「外的な五感からの刺激情報をきっかけに、特定の反応や行動、感情が引き出されるプロセスを作り出すこと」です。

 ・夕食後に自分の部屋の机で勉強する

を例にあげます。

 夕食後:時間トリガー(アンカー)
 自分の部屋の机:場所トリガー(アンカー)
 勉強する:刺激となるトリガー(アンカー)によって引き出される行動

 アンカー(anchor)とは「船を固定する錨(いかり)」のことです。ある特定の「行動」や「状態」を引き起こす引き金となる刺激(trigger)となります。

 上の行動は、

 (夕食後+自室の机) ~~~~~>(勉強を開始する)

と、「錨でつなぎ止める」ことになります。これを「アンカリング」と呼びます。これまで「if-thenルール」「trigger」という言葉を使ってきましたが、「アンカリング」「アンカー」は心理学的な用語になります。アンカリングによって、スイッチをオン・オフするように、望んだ行動や心理状態に切り替えることができるようになります。

 

さらなるトリガー(アンカー)の必要性

 「夕食とって、おなかいっぱい。ちょっとくつろごう。あー。もうすぐ7時(=時間トリガー)だ。部屋に行って机に向かわなきゃ。。。よし、イスに座ったぞ(=場所トリガー)。あ、スマホになんか連絡きたなぁ。スマホといえば、ゲームも途中だったなぁ。そういえば友達、ゲームクリアしたって言ってたなぁ。その友達、今日の体育の授業で活躍してたなぁ。自分は運動苦手だから疲れたなぁ…。

 時間と場所をトリガー(きっかけ)として固定し、学習習慣として身につけられればよいのですが、食事をとったあと、リラックスしすぎたり、いろいろなことを考えたりして気が散ってしまい、なかなか次の行動「勉強」に移れないことがあります。

 したがって、さらなるアンカー(トリガー=きっかけ)を設定することにより習慣化を促進します。子供には、「さあ勉強を始めるぞ」という強い刺激、きっかけが必要なのです。

 

ちょっとした行為や独特なジェスチャーをアンカー(トリガー)として追加する

 専門的には「身体的アンカー」といいます。

 日本で最も有名なアンカリングは、野球のイチロー選手のルーティンです。バッターボックスに入る前に、バットをゴルフスイングのように振り、屈伸をして、バッターボックスに入ったら、バットを大きく回してから垂直に構える、というルーティーです。こうした習慣的ルーティーン動作によって、イチロー選手は「集中モード」に入っていけたのです。ラグビー五郎丸選手の、両手を合わせて人差し指を立てるポーズもわかりやすいアンカリングの例です。相撲で、力士土俵に入る前に顔をパシパシたたいたりするのも一例です。

 心理学の有名な実験にパブロフの犬があります。「音を鳴らす→犬にエサを与える」という行動を繰り返すと、犬が音を聞くだけで、エサがなくても唾液を出すようになります「条件反射」です。「条件反射」は人間にも見られます。「梅干し」「レモン」と聞くと口の中に「つば(唾液)」が出てきて、すっぱい感覚まで呼び起こされます。これをもとにして心理学として提唱されたのが「アンカリング」です。

 

身体的アンカーの具体例

 追加するアンカー(トリガー)は、普段は行わない独特な刺激であることが望ましいです。ちょっとユニークなものでもかまいません。しかし、簡単にできるもの、例えば、手や指のちょっとした動きだけで完結するものが適当です。

 ・耳を触る
 ・左手をぐっと握る
 ・親指を包んでこぶしをつくる
 ・親指の先と中指の先を合わせる
 ・薬指の爪をじっと見る

 普段あまりしないこのようなちょっとした行動を何度も繰り返すことで、「次の行動へのリンク」が形成されやすくなりますイチロー選手の「バットを垂直に構える」というルーティンは、「独特な刺激」ですので、多くの人の記憶に残っているのです。

 私自身は、普段、気がかりなことや心配事をくよくよ考え続けてしまう傾向にあります。首を左右にブルブル振って、思考を切り替えようとするのですが、気が付くとまた、心配事を考えています。そんな私は、

 ・鼻をつまむ

をトリガー(アンカー)にして散漫思考を切り替えて集中モードにもっていきます。自分で言うのもアレですが、気持ちの切り替えに結構いいですよ

 

 ここで、先ほどの例に戻ります。

 「夕食とって、おなかいっぱい。ちょっとくつろごう。あー。もうすぐ7時(=時間トリガー)だ。部屋に行って机に向かわなきゃ。。。よし、イスに座ったぞ(=場所トリガー)。あ、スマホになんか連絡きたなぁ。スマホといえば、ゲームも途中だったなぁ。そういえば友達、ゲームクリアしたって言ってたなぁ。その友達、今日の体育の授業で活躍してたなぁ。自分は運動苦手だから疲れたなぁ…。

 いわゆる「気が散っている」状態です。この集中力を欠いた漠然とした散漫思考を、独特な行動で「パッと一転」させ、集中モードに切り替えさせます。私の「鼻をつまむ」という行動は、つまんだ時、視線が鼻先の「一点」に集中し、思考も集中しやすいのです。イチロー選手の「バットの先端」とか、ラグビーの五郎丸選手の「指先とかも、「一点集中」しやすくなると考えられます。
 
 「一点集中」のアンカー行動の他の例として、

 ・頭の上に鉛筆を置いて、目を閉じ、10秒たってから目を開けて勉強にとりかかる

も有効だと考えられます。

 頭上の鉛筆が落ちないように、バランスをとるため、頭頂部(先端)に意識が集中します。

 もともと人間の意識は分散するものであり、ひとつのことだけに集中していると、他のことが見えなくなり事故や危険な目にあうことがあります。しかし私たちには、仕事や勉強など集中しなければならない時があります。そんなときは、強制的に視界を狭め、頭頂部に意識を集中させることで、目を開けたときに集中力が高まった状態で課題にとりかかることができます

 スポーツ選手が、自分の良いときのイメージを頭に思い描いてからプレーを始めたり、「オレならできる!」と自分に言い聞かせてから行動を始めるのもアンカリングの一種です。(イメージや言葉をアンカーにします。)ですから、頭に鉛筆をのせながら目を閉じ、「必死に勉強している自分の姿をイメージ」し、「オレは勉強ができるんだ!」と心の中で唱えてから目を開ける、といいのかもしれません、が、やり過ぎかも。

 以上にように、アンカーが複雑で多すぎたり、あまりに独特な動作は避けたほうが身のためです。

 ・鼻の穴に指2本つっこむ
 ・こぶしを握り、口の中に入れる
 ・仮面ライダーの変身ポーズをとる

 見られたら心配されます。人前で容易にできないようなものは避け、「簡単にできる」「シチュエーションを選ばない」「座ったままできる」ような「ちょっとしたジェスチャー」がいいと思います。「普段はあまり行わない動作」かつ「少し刺激のある」もの、かつ「手や指のちょっとした動きだけで完結する簡単なもの」がアンカリングを発動させるのに有効です。

 

その2のさいごに

 「晩ごはんを食べたら、自分の部屋に向かい、机に座って、頭に鉛筆をのせてから勉強にとりかかる」を「毎日繰り返しましょう」、っていうお話でした。特に身体的アンカーで切り替えて次の行動に移すことは有効ですのでおすすめです

 習慣化のための初動(とっかかり)のお話は、今回までで終了です。次回は、【「継続」のための「ちょっとした工夫」】のような内容にしたいと思います。