ふすまのスキマ

アクティブなとき、そうでないとき、ココロの心太(ところてん)

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【教育】「うちの子、けっこう勉強してるのに成績が伸びないんです。」【なぜ勉強しているのに成果が出ないのか?】その2:成長領域

 前回のその1からの続きになります。

前回の復習をします。

・ただ活字を追っているだけの読書
・ただひたすら努力を続ける筋トレ
・やってはいるけど成果が出ない勉強

を例にあげ、
「勉強や努力はしているけど、結果に結びついていない。」のはなぜかを考察していました。

 野球選手のダルビッシュさんが以前X(Twitter)でつぶやいた、
『練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。
の言葉も引用し、

 同じ時間、同じ勉強(表面上同じ勉強)をしていても成果に差がある原因として、
 ・脳に適度な負荷がかかっている勉強なのかどうか
 ・努力エネルギーを効率的に変換できているかどうか

をあげました。そして、

「英単語100個を明日までに覚えてくる」
※ 英単語をみて日本語(意味)を書く、というテスト(100問)が明日あるとします。
※ 以下の例の子供の「勉強時間は同じ」とします。

という宿題を例に挙げ、6人の子供がどのように英単語を覚えるか、そしてその効率性の話をしていました。

 宿題をアタマを使ってやるとは、脳に負荷がかかっているかどうか、ということであり、

 ・脳に負荷のかかっていない勉強をしている ≒ 要領がよくない子供
 ・程度の差はあれ脳に負荷のかかっている勉強をしている ≒ 要領のよい子供

と考察しました。

 脳に適度な負荷がかかっていると、子供は効率的に単語を覚えられ、同じ時間勉強しても「成長速度」が速く、努力エネルギーを効率的に成果(成長)につなげている、つまり、努力エネルギーの変換効率が良い、というお話をさせていただきました。

(以下、今回の内容になります。)

 

 この、「脳に適度な負荷がかかっている子供」は「ストレッチゾーン」にいる状態になります。

 ストレッチゾーン(Stretch Zone)とは

ストレッチゾーン背伸び・成長(Stretch)領域(Zone)

 

 この領域は、途中、ちょっと苦しいけど、がんばって背伸びをすれば(脳に負荷のかかる努力をすれば)達成できるチャレンジの領域です。脳に負荷がかかるので、適度な緊張や刺激を感じます


 このゾーンに身を置くことが子供にとって「成長への近道」となります。この領域はラーニングゾーン(Learning Zone:学習領域)やグロースゾーンGrowth Zone:成長領域)とも言われ、大きな学びや成長が期待できる領域です。


 英単語を覚える宿題の例の「子供B1~4」は、程度の差はありますが、「脳に負荷のかかっている勉強をしている ≒ 要領のよい子供」であり、この「ストレッチゾーン」という心理的領域にいます。(詳細は次回以降にお話しします。)

 上記の子供B1~B4は、脳に負荷がかかる勉強方法(覚えるなど)をとっているので「成長する(成果が出る)」のです。

 

 では、子供A1はどうでしょうか。特別な方法をとらず、ただ「見て」繰り返しているだけです。これでは脳に負荷がかかりません。子供A2は、10個に区切るというスモールステップを採用してはいるものの、やはり「見ているだけ」で、方法や覚えることを意識していません。


 このような子供A1、A2は「コンフォートゾーン」にいる状態です。

 

 コンフォートゾーン(Comfort Zone)とは

コンフォートゾーン快適・安心(Comfort)領域(Zone)

 

 その人が慣れ親しんでいてストレスや不安を感じずにいられる、心理的な「快適な安全領域です。

 脳にストレスとなる負荷をかけないで、「居心地のいい精神状態」で勉強しています。その時点で持ち合わせているスキルで対応してしまい、新たな方法やスキルを身につけるチャレンジや努力をするとストレスになるので、その居心地のいい場所から出ようとしません。わざわざ脳に負荷をかけて「覚える」ということをしないのです。


 居心地のいい場所に居続けると人は成長しません。居心地が良すぎるあまり、その領域から抜け出そうとせず、次のステージ(ストレッチゾーン)に向かおうとしないからです。


 大人もそうです。ある程度年数を重ねて仕事のスキルや経験値を身につけると、いわゆる「仕事ができる」状態になり、その状態で満足してしまうことがあります。さらに負荷をかけチャレンジすると、失敗する恐れがあるので、ストレッチゾーンに向かおうとしません。今の「仕事ができる状態」、「周りから認められ敬意を払われる状態」から、一歩踏み出すことができないのです。


 人だけではなく動物は、できるだけストレスや不安にさらされようとせず、快適な生活を送ろうとするので、ストレッチゾーンに向かうことを避けるのは本能的なことです。また、以前ご紹介した「一貫性の原理」も働きます。(「ローテーションで着る服を決めている」というような、『行動をルーティーン化することによって、脳に負荷のかかる選択の機会が減るので、その楽な習慣行動を変えようとしない心理状況のこと。)

 

 しかし、人は成長するために、脳に負荷をかけコンフォートゾーンからストレッチゾーンに向かう必要がある機会があります。また意図せずストレッチゾーンに入り、脳に負荷がかかる場合があります。

 しかし、脳にかける負荷は、「適度な」ものであるべきで、「過度な負荷」は精神的に追い詰められてしまいます。この過度な負荷のかかった状態は「パニックゾーン」と呼ばれる領域です。

 パニックゾーン(Panic Zone)とは

パニックゾーン混乱(Panic)領域(Zone)

 

 パニックゾーンは、直面する課題が自分のスキルをはるかに超えたレベルで、脳に過度の負荷がかかった時に達する混乱領域です。

 この領域では、不安やストレスが許容範囲を超え、学習者はパニックになり挫折を経験する可能性が高くなります。少し背伸びをすれば対応できるストレッチゾーンと異なり、パニックゾーンは、今、持ち合わせているスキルでは、全く対処できない領域なのです。


 今回の英単語100個覚える、という宿題の例でいうと、単語のレベル自体が難しすぎる、とか、量が1000個とか、10分後にテストするとか、負荷やストレスが極端すぎて、対応できずにパニックになってしまう状態です

 この場合、かなりの努力を試みるものの、目的達成のハードルが高すぎることや、不安定な精神状態のため、その努力エネルギーの変換効率が悪く、成長や成果に結びつかず、精神的な不調をきたすことさえあります

 先の筋トレの例でいうと、無理な目標をたて、レーニングしすぎて体が壊れる状態です。


 あえて強烈な負荷をかけて成長スピードを速めるという指導法もありますが、一部の子供は適応できるでしょうが、つぶれてしまう子供が多いはずです。

 そのような極端なパニックゾーンを経験すると、よりコンフォートゾーンにとどまりたいという思考に陥ってしまうことがあります。したがって、脳に「適度な」負荷のかかる宿題や勉強(ストレッチゾーン)が、子供の成長に効果的なのです


 今回の英単語の宿題の例は、このパニックゾーンは存在しないので、ご紹介だけにとどめておきます。

 

 まとめ ~ その2のおわりに ~

コンフォートゾーン=脳に負荷のかかっていない勉強
=努力の変換効率が悪い
≒要領がよくない子供
=成長が遅い、成果が少ない

ストレッチゾーン=脳に「適度な」負荷のかかっている勉強
=努力の変換効率がよい
≒要領がよい子供
=効率的に成果・成長に反映される

パニックゾーン=脳に「過度な」負荷のかかっている勉強
=自分のスキル以上の課題を、混乱した精神状態でおこなう努力は変換効率が悪い
=一部の子供は成長が望めるが、多くの子供は過負荷で挫折し、コンフォートゾーンに留まりたがる

 

 次回以降は、英単語を100個覚える、の子供の例をひとりずつ詳しくみていきます。それぞれの子供がとった学習方法がどのようなものなのか、どのように効率的に成果に結びついているのか、をお話しする予定です。

 

 【追記:2024年3月13日】
 次回「その3」も、成長領域の話が長くなり、成長領域の話だけで終わってしまいました。

 子供の例をひとりひとり詳しくお話しするのは「その4」以降になります。