【教育】メタ認知って その5【学習の5段階】
「学習の5段階」というものがあります。「メタ認知」を語る際に共通要素が多く存在します。「学習の5段階」を知ることにより、現在の自分が「どの段階」にいるのかを知り、「何をするべきか」がわかるようになり、また、指導的立場の人も、相手がどの段階にいて何ができないのか、何が必要なのかを理解することができます。
まずは目次ついでに、堅苦しい分類からです。
- 第1段階 「知らない」から「できない」 ― 無意識的無能 ―
- 第2段階 「知っている」けど「できない」 ― 有意識的無能 ―
- 第3段階 「集中して意識すれば」できる ― 有意識的有能 ―
- 第4段階 「考えなくても自然に」できる、「当たり前に」できる ― 無意識的有能 ―
- 第5段階 「人に教える」ことができる ― 意識的有能 ―
- 【補足1】誰かに「真に」教えるということ
- 【補足2】勉強が苦手な子供によくある傾向
- 【次の段階に進むための指導者の適切なサポート】
- おわりに
以下、「三角形の面積の求め方」という視点から、私自身の理解促進のためにもできるだけ平易な表現と具体例で書いていくつもりです。
第1段階 「知らない」から「できない」
― 無意識的無能 ―
『まだ習ってないし、教えてもらったことないからできるわけないじゃん!』
例:「三角形の面積を求めなさい」と言われても、教えられたり勉強したことがなく、何をしていいかわからない。求め方や「底辺×高さ÷2」という公式を知らない。だからできない。
まずは知っておかなければならないこと、覚えなければならないこと、があります。「基本的な知識を身につけること、その使い方を知ること」で次の第2段階へと進みます。
第2段階 「知っている」けど「できない」
― 有意識的無能 ―
『この問題やったことあるけど、どうやるんだっけ?わかんなーい!』
例:三角形の面積の公式や求め方は知ってはいるが、解けない。「公式は底辺×高さ÷2だけど、どこが底辺なのかなぁ、高さはどこかなぁ。公式はわかるし教えてもらったけどできないなぁ。」という状態。
解き方を知ってはいるが、考えてもできない。自分では解けず、練習はしてみるけど技術が追いつかずできない。また、説明を受けたらわかる状態でもある。「解説してもらえればわかる」「例題や、参考書を見直せばわかる」「答えを見たらわかる」といった状態で、勉強が苦手な子供がストレスを感じ、この段階にとどまってしまうのです。
勉強がいちばんつまらない時期
な気がします。
本人は頑張っているのに、努力が報われず失敗を繰り返すつらい時期
な気がします。
わかったつもりになっていても、実際に解いてみると解けなくて苦しい段階です。
次の第3段階に進むためには「わかる問題、同じ問題」を「繰り返し解く」「反復練習する」ことが必要になってきます。『問題に慣れる』ことが大切。ここでとどまってしまう子供に対して、また、コツコツした努力が苦手な子供に対して、指導的立場の人間の適切なサポートが必要になる場面がこの第2段階→第3段階です。ある意味、指導者の腕の見せ所です。(後述で少し私の考えを述べます。)
第3段階 「集中して意識すれば」できる
― 有意識的有能 ―
『あー、やったことあるなあー。たしかこうするんだっけなぁー。えーっとー。』
例:「三角形の面積を求めなさい」と言われ、「えーっと。。。確か公式は底辺×高さ÷2だから。。。えーっと。。。ここを底辺として高さはここで。。。こうか! あ!!÷2するのを忘れてた!あぶないあぶない。。。えーっと。。。できた!あってるはず!」
「意識的に集中すればできる」状態です。注意深く気を緩めないでやればできる状態です。この「集中力を保った状態」を継続すると少しづつ「集中慣れ」ができてきます。
次の段階へ進むためには、第2段階のように「ただ繰り返し解く」だけでなく、試行錯誤を繰り返しながら経験値を積み上げる意識を持って取り組むことが大切です。集中力を保ちながらも『完全に身につけようと意識しながら解く』、すこし発展させて『類題だと認識しながら解く』『応用パターンだ!と認識しながら解く』という、主体的・自主的認識が必要になってきます。今、自分ができている状態はまだ未完成だ、とメタ認知できることが大切です。
そしてこの第3段階から次の第4段階に「自主的に」進むことが、大変難しいのです。第3段階では「とりあえずできる」ようになっているので、この段階でとどまってしまう子供が多いのです。そんな場面でも指導的立場の人間の「子供の自主性を尊重したサポート」が必要です。(後述で少し私の考えを述べます。)
第4段階 「考えなくても自然に」できる、「当たり前に」できる
― 無意識的有能 ―
『あー、あの問題ね。こんなの考えなくてもできるぜ!』
例:「三角形の面積を求めなさい」と問われ、迷うことなく「あ、いつもの問題だからすぐできるぞ。底辺×高さ÷2に代入して、答えはハイ、これ!楽勝!絶対正解!オレ様天才!」
「何が問われているのか」「自分は何を知っているのか」「どの知識を使えばいいのか」「どうやって使ったらいいのか」が、『即座に』わかり、自信を持ってできる状態。極端に言うと、音楽を聴きながらとか、友達とおしゃべりしながらでも正解を出せる状態です。身体に解く感覚がしみ込んでいる習慣化された状態です。経験値が高いレベルになっています。
この段階まできた努力と自信が、他の学習や今後の仕事にも生かせるような「内発的動機」の要因を形成することができます。
ここから先は「深掘りしてもっとスマート(効率的)な解き方(別解)を考えるたり工夫する」「応用問題への自主的な挑戦」「難問でも常に基本に立ち返る」などの発展的意識が必要になってきます。より高みを目指し意識的に学習を進めることになります。
第5段階 「人に教える」ことができる
― 意識的有能 ―
※第5段階は「無意識的有能に対しての意識的有能」ともいう
『友達がわかってくれたら嬉しいし、わかってもらえるように教えられそうだなぁ。自分の復習にもなるなぁ』
例:友達に「この三角形の面積の問題できる?」と聞かれ、「友達が理解できるように説明して教えられる」状態。
この第5段階は、1~4のステップアッププロセスとは少し異なり、メタ認知的に高度な「意識して言語化する」能力も必要になってきます。教えるということは「自分が無意識下でわかっていることを意識上にもっていき、言語としてアウトプットする」レベルの高いメタ認知能力です。
また、習得したことを他者に「アウトプット」することで、自分にフィードバックされ、自分の中の理解がより深まります。自分ではわかっているつもりでも、いざ相手に教えようと思うとなかなかうまくいかないものです。そしてこの「自分にフィードバックされている」こともメタ認知して理解できる状態になると、さらにメタ認知能力が上がります。難しいことなのですが、第5段階目の「教えられる状態」を意識し目標にしてみることも良いトレーニングになります。ヒトに教えられるくらい上達することを「意識して」取り組むってことです。
【補足1】誰かに「真に」教えるということ
① 相手のレベル、わからないところ、なぜわからないか、の把握
② 相手の状況や環境(いつまでに解けるようになればいいのかなど)の把握
③ 自分は教えられる知識があるのか、わかりやすく説明する方法論を持ち合わせているか、教えることが相手のためになるのか否か、全部教えるのではなく相手が自ら答えを導き出せるように教えるにはどうしたらいいのか、など、自己に対する問いかけをしメタ認知行動をする
など、相手に教えるという行動は、非認知能力の向上に大いに貢献します。
自己の無意識プロセスを意識化レベルに持ち上げ、
言語化してアウトプットするのです。
自身の経験と能力を認知し、また他者にも共感し、
賢くても教えるのが苦手なヒトもいます。自分はわかっているけど、他者に共感できていないのです。
【補足2】勉強が苦手な子供によくある傾向
- 第2段階で、「わかっているつもりなのにできない」状態が続くと、ストレスを感じ、やる気が失せて諦めてしまう
- 第3段階の「集中して意識すればできる」状態まで到達して満足してしまい、できるようになったと勘違いして、復習や反復練習をせず、定着しないままやめてしまい、第4段階の「考えなくても自然にできる」状態を目指さない。また、「集中すればできる」状態は、「集中しないとできない」という言い方もでき、集中し続けることにストレスを感じたり、集中力が切れて不正解だった時にもストレスを感じます。
(その他の傾向として、「階段をとばしてしまう。段階的に習得することを省略して、いきなり高いレベルの問題にとりかかってしまう」、ということもあります。)
【次の段階に進むための指導者の適切なサポート】
このストレスが発生する第2段階、第3段階はどんな学習者も経験することであり、この段階を乗り越えることで、あきらめずに継続した結果、問題が解けるようになり、ストレス状態から解ける喜びを感じる状態になります。しかし、メタ認知力が乏しく自分ひとりでは乗り越えられない学習者には、指導的立場の人間が適切にサポートすることが必要になります。
指導的な立場のひとは、子供が今どの段階なのか、次の段階に進むにはどんなサポート、声掛けをしたらいいのか、を意識し、根気強く寄り添います。
特に第2段階の「わかっているけどできない」状態から次の第3段階へのサポート時には、「子供がストレスを感じていること」に共感するとともに、「子供が『自分で解けるようになった感』を味わえるように導いていく工夫をすることが必要です。「さっき教えたのになんでできないんだ!」なんて言ったら、子供はさらにストレスを感じてしまいます。
また、第3段階の「集中すればできる」状態、「できた気になっている」状態から、第4段階の「当たり前にできる」状態にするための、根気のいる「反復練習」時の声掛けの工夫も必要になってきます。スポーツ選手のコーチが、つらい練習中の選手に励ましたり、頑張ったプロセスを褒めたり、「きついよね」って共感したりするときの感じだと思います。
子供に無理やり階段をのぼらせることなく、自ら階段を上がろうとする子供を後ろから見守り、転がり落ちそうになった時、ときには手を差し伸べるのを我慢し、ときには後ろからそっと支えてあげられるといいと思います。
おわりに
現在取り組んでいる課題において、自分がどのステージにいるのかを知ることは大変有意義なことです。今はできなくて苦しくて、失敗することもありますが、ちょうど階段を登ろうとしている最中なのかもしれません。今の自分がいるステージと、どうやって階段をのぼったらいいのかを意識し、あきらめないで継続し、また、指導者や保護者、友達にきいたりして、1段ずつ階段を上がっていけるといいですね。あんまり焦らないでいいですよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。