勉強せずに、ゲームばかりしている子供を心配する親はたくさんいます。
子供がゲームに熱中するのは、ある程度は仕方のないことです。大人も含め、人間は何かに熱中、没頭、執着、依存するのは普通のことです。趣味などもその一例で、没頭すると時間を忘れてしまいます。
子供のゲームであろうが大人の趣味であろうが、それをしている間は幸福感が上昇するのです。
「成長に必要な3要素」
子供は、「成長のために必要な3つの要素」を、ゲームをプレイすることによって得られます。一般に「成長のための3要素」とは、
① 熟練によって得られる技術的『能力』
② 自分で選択できて、自由に行動できる『自律性』
③ 他人との関係を築いたり協力しあう『関連性』
です。
なぜ子供がゲームの世界に没頭するか
最近のゲームはかなり現実的で、高度な技術が必要であり、
① ゲームクリアや目的達成のためにプレイ技術を上達させることで得られる「能力」
② ゲーム内の問題解決のために試行錯誤し、自分で選んだ選択肢を自分で試し行動する「自律性」
③ 他のプレイヤーとの協力やゲーム内コミュニケーションによる「関連性」
を得ることができます。
「ゲームの世界」は子供たちにとって、自ら選び、自ら考え、自ら行動し、自ら他者とかかわり、その成果を「自分で達成した感」として味わえるのです。それは、魅力的な世界ですよね。
「現実世界」の学校では 受動的に「教えられる」「やらされる」ことが多く、自分で選んで自分で考えたり挑戦することが少なく、「自分でできた!」という「自主的な能力向上」を実感することが少ない気がします。
もちろん、「ゲームの世界」と「現実の世界」では、「成長に必要な3要素」を獲得するプロセスや難易度に違いはあると思います。しかし、子供たちの「幸福感」を頭ごなしに否定することは、子供の自己肯定感・自主性・自律性を阻害する恐れがあります。
ですから親は、ゲームのメリット・デメリットも踏まえて、子供に「共感と敬意」を示しながら、また「子供から敬意を払ってもらえるような人間」としてのコトバで伝えていかなければなりません。強制的に排除すると、子供の幸福感が減退してしまいます。
ゲームを介した「非認知能力」と「メタ認知力」向上の例
ゲームで得られる「成長に必要な3要素」と、これまで私がブログで述べてきた「非認知能力」「メタ認知」の関連を考えていきます。
1.子供がゲームをプレイすることを肯定的に「成長の機会」と考えてみる。
親が子供からゲームのやり方を教わったり、コーチしてもらいます。(一緒にゲームをするのとは少し違います。)
「そのゲーム面白そうだね。やり方、教えてよ。」って。
先のブログで述べた「メタ認知」や「学習の5段階目:人に教える」のトレーニングになります。教えるということは「自分が無意識下でわかっていることを意識上に持ち上げ、言語としてアウトプットする」レベルの高いメタ認知能力です。ゲームで得られる以上に「能力」「自律性」「関連性」の3要素を獲得させるのです。
子どもが親に対してゲームの先生になるということは、
① 人に教えるために、無意識を言語化したアウトプット「能力」
② ゲームが下手な親のプレイ技術を上達させる方法を、親ではなく子供自身が試行錯誤する「自律性」
③ 親とコミュニケーションを行う「関連性」
の3つを同時に得ることができます。
「ゲームなんかしてないで勉強しなさい!」と、うるさく言ってきた親も、こちらから教えてもらうことをお願いすることにより、子供から共感が得られ、また、親も子供の考えに共感し、子どもとの対立関係が解消されることもあります。「ゲーム、上手だね」とか、「すごいね」という言葉かけは、子供からすれば「共感してもらっている」と、幸福感が増します。親から言われると、少し恥ずかしがったりして。
2.子供に共感し、子供の自主的な選択をさせる。
一緒にゲームをプレイすることや教えてもらうことで、親子は「お互いに共感」できます。さらに、一歩踏み込んで、「ゲームは楽しいし、あなたのように上手になりたいけど、仕事があるし家事もする必要があるから、時間を決めてゲームを教えてほしい。それに、あなたも他にすることがあるだろうから、自分でゲームをプレイする時間を決めて。」といった感じで、伝えてみます。このような「伝える技術」や「伝えるタイミング」は大人が工夫したり学んでいかなければならないことです。
おわりに
子供のゲームに関しても、私たち大人が「メタ認知的に」別の視点からとらえ、また、あれもこれも制約を設けるのではなく、子供たちの自律性を高められる保護者の工夫があると、子供たちの「非認知能力」「メタ認知力」の向上につながる気がします。