前回の「~勉強してるのに~その2」の続きになります。
(書き終えてみて、予定していた内容まで到達しませんでした。次回以降になります。)
少し復習します。
「同じ時間、(表面上)同じ勉強をしていても成果に差があるのはなぜか」を考察していました。
「英単語100個を明日までに覚えてくる」
※ 英単語をみて日本語(意味)を書く、というテスト(100問)が明日あるとします。
※ 以下の例の子供の「勉強時間は同じ」とします。
という宿題を例に挙げ、6人の子供がどのように英単語を覚えるか、そしてその効率性の話をしていました。
宿題を「アタマを使ってやる」とは、「脳に負荷がかかっているかどうか」、ということであり、努力エネルギーを効率的に変換できていると成果がでやすいという話をしました。
「その2」のまとめとして、脳に「適度な」負荷のかかる成長領域である「ストレッチゾーン」に身を置くことが「成長への近道である」とお話しました。
・コンフォートゾーン=快適・安心(Comfort)領域(Zone)
=脳に負荷のかかっていない勉強
=努力の変換効率が悪い
=成長が遅い、成果が少ない
・ストレッチゾーン=背伸び・成長(Stretch)領域(Zone)
=脳に「適度な」負荷のかかっている勉強
=努力の変換効率が良い
=効率的に成果・成長に反映される
・パニックゾーン=混乱(Panic)領域(Zone)
=脳に「過度な」負荷のかかっている勉強
=自分のスキル以上の課題を、混乱した精神状態でおこなう努力は変換効率が悪い
=一部の子供は成長が望めるが、多くの子供は過負荷で挫折し、コンフォートゾーンに留まりたがる
(以下、今回の内容になります。)
- その3のはじめに
- コンフォートゾーン⇔ストレッチゾーン⇔パニックゾーン
- 子供がストレッチゾーン(成長領域)に身を置くために
- 成長領域に関する身近な例
- 親が自宅で子供に教えても。。。
- 成長領域をゲームに例えると。。。
- その3のさいごに
その3のはじめに
身近な例として「車の運転」をあげてみます。
自宅周辺のよく知っている道を車で走るときは、特別、意識することがないのですが、初めての知らない道を走ると、けっこうな緊張がありますよね。でも、しばらくしてその道を2回目通ったときは、少し緊張感が薄れ、数回通ると慣れてきます。これは、ストレッチゾーンだった道がコンフォートゾーンになったということです。
また、自宅周辺の道でも、思わぬところで工事していたり、渋滞していたり、路上駐車が多くて通り抜けに苦労する場合はパニックゾーンっぽくなります。
コンフォートゾーン⇔ストレッチゾーン⇔パニックゾーン
ストレッチゾーンで、脳に適度な負荷をかけた課題を継続していると、スキル的にも精神的にも成長してストレッチゾーンの負荷に慣れてきます。すると、
そのストレッチゾーンがコンフォートゾーンに変化します。
言い換えると、
新たにコンフォートゾーンが広がるのです。
したがって、常にストレッチゾーンに身を置き、そのストレッチゾーンをコンフォートゾーンに変えていけば、理論上は成長し続けられることになります。
しかし、実際はコンフォートゾーンの快適さに甘んじて、コンフォートゾーンに留まってしまったり、ストレッチゾーンに足を踏み入れたとしても、コンフォートゾーンに逆戻りすることがあります。
また、自分がパニックゾーンにいる、と思っていたけど、実は、コンフォートゾーンにいた、ということもあります。
これは、初期段階で、自分がどの領域にいるのかの自己認識を誤っていたり、周囲の人のパニックの程度と比べてみたら、自分はたいしてパニック状態ではなく、むしろ楽だった、と認識し直すことによっておこります。
子供がストレッチゾーン(成長領域)に身を置くために
まずは、
自分が今、どのゾーンにいるのか、的確に認識すること
が大切です。
自ら自分がいる領域を認識(メタ認知)できる子供もいますが、そうでない子供も多くいます。
この自己領域認識プロセスは以下のように行われ、その後、ストレッチゾーンに足を踏み入れたり、留まることになります。
①「過去の自分との比較」による自己領域の認識
⇒「以前よりたくさん覚えられたし、点数もあがってきたぞ!」
⇒ストレッチゾーンからコンフォートゾーンに移行しつつある
⇒ストレッチゾーンへ「もっとがんばろー!」
②「未来の目標とする自分との比較」による自己領域の認識
⇒「100点とるには、まだ足りない!」
⇒ストレッチゾーンでもう少し練習が必要だ!
③「他の子供との比較」による自己領域の認識
⇒「あの友達、めちゃめちゃ努力しているぞ!すごいなぁ。毎回100点だし。オレは練習不足なのかなぁ?」
⇒ストレッチゾーンにいるつもりが、実はコンフォートゾーンにいるのかもしれない、と認識
⇒ストレッチゾーンへ「オレもがんばるぞ!」
④「他の子供(親・指導者)からの指摘」による自己領域の認識
⇒『キミ、勉強足りないんじゃね。』⇒「えっ?けっこう勉強したつもりなのに。。。そっか。勉強方法がわるいのかなぁ。」
⇒ストレッチゾーンへ「もう少し集中して苦手なポイントをなくすぞ!」
自ら自己認識できる子供(非認知能力が高く、メタ認知できる子供)は、自らストレッチゾーンへ足を踏み入れます。
しかし、多くの子供は、自分に負荷をかけたり、その結果失敗するのを恐れます。たとえ少しの負荷だったとしても、自分の能力を超える負荷にチャレンジするのが怖いのです。
このような場合は、保護者や指導者、仲間からの励まし、または見守ってくれている存在を感じること、など、他者からの関わりが必要です。
また、勉強以外のどんなことでもいいので、
「それまでやったことないことを経験する」
という方法もいいと思います。
未知の事柄や出来事(つまりちょっとした負荷)への耐性をつける(ストレッチゾーンに慣れる)のです。
なんでもいいんです。「やったことのないこと」なら、なんでもいいんです。
「玄関のくつを脱ぎっぱなしにしないで、そろえてみる」
「食後のお皿を洗い場にもっていく」
「マンガ以外の本を読む。開くだけでもいい。」
「ゲームする時間を1分だけ減らす。」
「帰宅時に、知らない道を通る。」
「ひとりで映画館に行って映画を観る。映画館の前まで行くだけでもいい。」
※もっと簡単なことでいいんですが、よい例が思い浮かびませんでした。
未知の新しい経験・体験をするって大切なことです。おうちの人と行ったことのない場所へ旅行するとかは、ストレッチゾーンでの貴重な体験を積むことになるのです。
なんでもいいので、新しい体験をすることで、ストレッチゾーンにいることに慣れて、勉強における負荷にも慣れやすくなるのです。
成長領域に関する身近な例
・初めてスキーをするとき
・自転車に乗れるようになるための練習をしているとき
・新入社員が仕事を覚えるとき
いずれの例も、初心者が新しいことに挑戦する場合です。
このような場合は、いきなりストレッチゾーンやパニックゾーンになります。(コンフォートゾーンではありません)。
本人たちにとっては、新しいことに「慣れていこう」と思っているはずですが、実は
「自分の能力を超えた負荷」のかかることに挑戦しているのです。
その負荷に挑戦し続けたおかげでスキーができるようになったり、自転車に乗れるようになったり、仕事ができるようになったりするのです。
子供は将来、なにかしら新しい仕事につきます。アルバイトを始めることもあります。その際に「必ず」ストレッチ-ゾーンやパニックゾーンに足を踏み入れることになります。
英単語を100個覚える際に、脳に少し負荷をかけて成長につなげる、ということは、ただ英単語を覚えるだけでなく、将来、社会に出でからの負荷への耐性をつけるための練習でもあるのです。
親が自宅で子供に教えても。。。
親が我が子に勉強を教えても成果が出にくい場合は、
① 親は人的コンフォートゾーン
② 自宅は環境的コンフォートゾーン
であることも原因になります。
慣れ親しんだヒトや環境は「脳に負荷がかからない」ので、努力エネルギーの変換効率が悪いのです。
親や自宅は、安全・安心な「スーパー★コンフォートゾーン」なのです。
親がせっかく勉強をみているのに、子供が緊張感なくダラダラやっていたり、気が緩んでいたりするのは仕方のないことなのです。むしろ、子供にとって安全・安心領域であることは素晴らしいことなのだ、と考えてみるといい気がします。
成長領域をゲームに例えると。。。
ゲームでいうと、「弱すぎる敵」を倒しまくったり、自分の故郷の村からでないのがコンフォートゾーン。負荷はかかるが村から出て、未知の世界に足を踏み入れたり、ちょっと強そうな魔物を倒しに行ったりするのがストレッチゾーン。ゲーム内でのこの「負荷」は、「わくわく・ドキドキ」といったスリルと興奮を感じる気持ちです。
勉強も本来は「わくわく・ドキドキ」が詰まったものなのです。
武器や防具なしで魔物と戦うと負けちゃいます。だから勉強して知識(武器や防具や魔法)を身につけ、そしてその正しい使い方を学び、問題(魔物)と戦うのです。
その3のさいごに
ここまでで、成長領域のお話がひと区切りです。今後もコンフォートゾーンとかストレッチゾーンという用語は多く使用していくことになります。
今回はもう少し先のお話までしたかったのですが、思った以上に成長領域の話が長くなってしまいました。すみません。
冗長部分が多くあるような気がしますので、今回の話の内容は、読んでいただいている方には、コンフォートゾーンだったかもしれません。次回はストレッチゾーンになれるよう努めてまいります。
次回以降は(今度こそ)、英単語を100個覚える、という宿題の子供の例をひとりずつ詳しくみていきます。それぞれの子供がとった学習方法がどのようなものなのか、どのように効率的に成果に結びついているのか、をお話しする予定です。