「〇〇ちゃん、よくできたねー。」
「100点すごいね!頭いいね!」
「上手だね!才能あるよ!」
いわゆる「ほめ方論」で、あまり 「好ましくない」とされるほめ方です。
なぜでしょうか?
「ほめたいからほめてるんだ!いちいちほめ方なんて考えてらんねーよ。」と言わず、少しだけお付き合いを。(個人的には「好ましくないほめ方」はないと思っています。goodかbetterかの違いだと考えています。)
今回は、「ほめ方論」ではなく、 「親や指導者はなぜ『ほめ方』を意識しなければならないか」「ほめ方の違いで、その後の子供の思考・行動にどのような違いや影響があるのか」を心理学的側面から「認識」すること(こんな考え方もあるよって知っておくこと)を目標にお話をさせていただきます。
好ましいほめ方とは
1. 「100点すごいね!頭いいね!」
2.⇒「良い点とれるぐらい、毎日こつこつ頑張って復習してたもんね!」
3.⇒「声に出して覚えたり、復習ノートを作ったりして覚えてたよね!」
1は「結果、成果、能力」をほめています。
2、3は「プロセス」、つまり「努力・姿勢・取り組み方」をほめています。
「結果や能力」ではなく「プロセス」をほめるほうが、その後の子どもの考えや行動に良い影響があるとされています。「ほめられ方」の違いにより、子供の「考え方(マインド)」が無意識に「固定・傾向化(セット)」され、その後の行動や学習動機に影響を及ぼしていきます。
マインドセットとは
近年、多くの企業やビジネス界で、社員の成長のための社内教育に、この「マインドセット」が活用されてきています。
「マインドセット」には2種類あります。
ほめ方と2種類のマインドセット
「良い点数だね」「あなたはアタマがいいね」
と、「結果や能力」をほめられた場合、ほめられると嬉しいので、次回も「同じように」ほめられたいと考えます。つまり「点数や結果を出して、有能さをほめられたい」と考えます。したがって、そのような子供は以下のような思考パターンになる傾向があります。
①「次も良い点数とって、頭がいいってほめられたい」
⇒ 結果や評価や賞賛を重視するようになる。
②「難しい問題がテストに出たら嫌だなあ。簡単な問題のほうが良い点とれそうだなあ。」
⇒ チャレンジを回避しようとする。失敗を恐れ、安定や安心を優先するようになる。
そして、もし前回よりも良い点数がとれなかった場合、
③「点数良くなかったから、自分はアタマが悪いんだ。能力ないんだ。もう嫌。」
⇒失敗に対しネガティブな反応(自己否定)をして、自分を責め、あきらめてしまう。
④「自分より点数悪いやついないかなぁ。あ、あいつオレより点数悪い!」
⇒自分よりも評価の低い人を探したり、それにより安心感を求める。
⑤「あいつ、良い点数とってるぞ。アタマいいんだな。」
⇒他者の成功を脅威に感じる
このような思考パターンを
「停滞型マインドセット」(Fixed Mindset)
といいます。
停滞型マインドセットは「人の能力は経験や努力によって向上できない」という考え方のもとに、思考が固定・硬直してしまい、問題を解決できなくなるとそれ以上努力しようとしなくなる、という傾向がある思考パターンです。また、変化を好まず、現状維持を望み、失敗を恐れ、挑戦には消極的です。
それでは、もうひとつのマインドセットをみてみましょう。
「良い点とれるぐらい、毎日こつこつ頑張って復習してたもんね!」
「声に出して覚えたり、復習ノートを作ったりして覚えてたよね!」
と、「努力・姿勢・取り組み方」といった「プロセス」をほめられた場合、やはり、ほめられると嬉しいので、次回も「同じように」ほめられたいと考えます。つまり、「努力やプロセスをほめられたい」と考えます。したがって、そのような子供は以下のような思考パターンになる傾向があります。
①「努力や勉強過程をほめられたってことは、そのやり方のおかげで点数がとれたんだ。」
⇒プロセスの大切さ、努力の大切さを認識するようになる。自分の能力は、努力や取り組み方次第で伸ばせると認識するようになる。
②「少しレベルの高い問題も、やり方や努力しだいでなんとかなるかも!」
⇒難題や挑戦も「自分の成長のチャンス」と、前向きにとらえる。
そして、もし前回よりも良い点数がとれなかった場合、
③「点数良くなかったぁ。でも、勉強過程はほめられたから、『やり方』や『練習量(努力)』を改善しよう。次も頑張るぞ!」
⇒失敗に対し内省し改善に向かう。失敗をポジティブとらえ、今後の糧にする。
④「あいつ、点数悪かったみたいだなぁ。どんな勉強の仕方しているか聞いてみて、良くないところがあったら教えてあげよ。」
⇒他者の失敗を自分にフィードバックさせる。
⑤「あいつ、良い点数とってるぞ。オレも頑張るぞ。あと、勉強方法とか勉強量とかきいてみたいな。」
⇒他者の成功を自分の刺激にし、他者からも学ぶ姿勢を示す。
このような思考パターンを
といいます。
成長型マインドセットは「人は経験や努力によって成長できる」という考え方のもとに、新たな挑戦や課題を楽しみ、失敗しても前向きにとらえる、という傾向がある思考パターンです。あきらめずに努力し続けることの大切さを知り、結果だけでなくプロセスを重要視できるようになります。様々な課題に自主的にとりくむので、多くの経験やスキルを得ることができます。
努力の過程を褒めることで、子どもは「自分の能力は努力次第で伸ばせる」という「成長型マインドセット」を持つようになります。「成長型マインドセット」について重要なポイントは、この「懸命に努力したり試行錯誤することで能力は鍛えることができる」という点です。プロセスを褒められた子供には、「努力は大切だ」という価値観が生まれ、結果や成功だけにとらわれず、困難な課題にも努力を惜しまず挑戦するようになります。
生まれもつ能力や資質、結果を褒めるよりも、そこに至ったプロセスや努力を褒める方が、子どものやる気を引き出せるのです。
さいごに
最初に述べましたが、個人的には「好ましくないほめ方」はないと思っています。goodかbetterかの違い程度で。正直に感じるまま褒めるのがbestに近いんじゃないかなって思ったりします。今回の「ほめ方」と「マインドセット」の話は、「こんな考え方があるよ」「ほめるとこんな感じでココロが動くことがあるよ」っていう参考程度で認識していただけると幸いです。