ふすまのスキマ

アクティブなとき、そうでないとき、ココロの心太(ところてん)

 お す す め 記 事 : 教 育 ・ こ こ ろ 
 お す す め 記 事 : モ ノ 

↑スライダー表示が崩れていたり動かない時は、お手数ですがキーボードの「F5」を押してページを再読み込み(更新)してみてください。

【教育】子供の「やる気のスイッチ」は2か所ある!【自己決定理論】

 「うちの子が、自分から勉強するようになるには、どうしたらいいんだろう?」

 親の永遠の課題です。正直、一筋縄ではいきません。

 「勉強に興味をもってくれたらなぁ」

とか、

 「何事にも好奇心をもってくれたらなぁ」

と簡単に言いますが、その「興味・関心・好奇心」といった「学習意欲・やる気」は、様々な要因によって育まれるものであり、その「動機づけの種類や方法」を知っておくことが大切です。

 「やる気のスイッチ」は、子供の「ココロの部屋」の「内側と外側」の2か所にある、 というような話から始めて、心理学的な要素を含めてお話していきます。

 先日のブログ「子供は何故ゲームに熱中するのか」で、「成長に必要な3要素」を得られるからだ、とお話しました。その「成長に必要な3要素」が『自己決定理論』の一部です。

 そして、同じく先のブログ「子供はなぜ宿題をやりたがらないのか」で述べた「学習意欲を構成する重要な3要素」でも似たような考えをお話しました。

 今回は「自己決定理論」をできるだけ平易な内容でお伝えして、子供の「学習動機づけ」のお役に立てればと思います。

 

 2つの学習動機

 「やる気のスイッチ」は、子供の「ココロの部屋」の「内側と外側」の2か所 にあります。 「内側のスイッチ」は、子供が自分で押すもの 。 「外側のスイッチ」は、外部要因、つまり、目標や義務感、賞罰といった外からの要因が押すもの です。

 

1.「お月様ってなんで形が変わるんだろう。もっと知りたいな。楽しそうだな。」
2.「将来、英語を使った仕事に就くっていう夢のために頑張るぞ。」
3.「受験に合格するために勉強するぞ。」
4.「宿題はやらなきゃいけないものだし、
   やっていかないと恥ずかしいからやるか。」
5.「勉強しろってうるさいし、やらないと叱られる。
   でも終わったらケーキもらえるから頑張ろー。」
6.「勉強したくない。」

 

 上記 1は自発的に子供のココロの側から押すスイッチ、 2,3,4,5はのスイッチ、 6はまだスイッチが無い状態です。専門的な表現をすると、上記1は「内発的動機づけ」、2,3,4,5は「外発的動機づけ」、6は「無動機づけ」と言います。この1~6をもう少し専門的に分類していきます。

 

【内発的動機づけ】
1.楽しいから、好きだから、興味があるから自発的にやる「内発的調整」
【外発的動機づけ】
2.自分で決めた夢や価値観と一致するからやる「統合的調整」
3.自分にとって有用性や目的があるからやる「同一化的調整」
4.義務感、不安、羞恥心などの理由からやる「取り入れ的調整」
5.言われたから、賞罰があるからなどの外圧からやる「的調整」
【無動機づけ】
6.やりたいと思わない「調整なし

 

 内発的動機づけは自主的にやる気になること、外発的動機づけは自分の外にある要因によってやる気になることです。一般に「外発的動機づけ」よりも「内発的動機づけ」の方が高い学習効果を得られます。つまり試験のためや、学校から出された宿題のため、親からのご褒美のためにやる(外発的な)学習よりも、自ら興味・関心を持ち、楽しいと感じている(内発的な)学習の方がより高い効果が得られます。

 

 しかし、すべての子供が「自らやる気になる」(内発的に動機をもつ)わけではありません。そんなときは、親や指導者が、

 まずは「外発的動機づけ」からはじめ、
 だんだんと「内発的動機づけ」を促していく
ことも必要となります。つまり、
 「外発的」⇒「内発的」と、動機を「移行」させていくのです。

 

 このような展開を支える理論が「自己決定理論」です。

 

 自己決定理論とは

「自分が決めた程度(自己決定、自律的決定)が、モチベーションに影響を与える。」

 

 先日のブログ「子供は何故ゲームに熱中するのか」で述べた「成長に必要な3要素」が『自己決定理論』の根幹 です。「ゲームの世界」は子供たちにとって、自ら選び、自ら考え、自ら行動し、自ら他者とかかわり、その成果を「自分で達成した感」が味わえるのです。

 この「成長に必要な3要素」は自己決定理論では、『人間の基本的な3つの欲求』といいます。すなわち、

 「有能さ」「自律性」「関係性」

です。ゲームを例に、どのように3欲求が満たされているかをみてみます。

① ゲームクリアや目的達成のためにプレイ技術を上達させることで得られる「有能さ」
② ゲーム内の問題解決のために試行錯誤し、自分で選んだ選択肢を自分で試し行動する「自律性」
③ 他のプレイヤーとの協力やゲーム内コミュニケーションによる「関連性」

つまり、

① 自分の能力とその証明ができる欲求⇒「有能さ」が満たされる。
② 自己の行動を自分自身で決めることができる欲求⇒「自律性」が満たされる。
③ 周囲との関係性やコミュニケーションを保てる欲求⇒「関連性」が満たされる。

ということになります。

 だからゲームは楽しいのです。

 

 これら3つの欲求が満たされていくことにより、 「外発的動機づけ」から「内発的動機づけ」に移行していくことができます。この移行の例を学習にあてはめてみると以下のようになります。

 1.最初はとりあえず、課題をだされたから勉強した
→2.やっていくうちに少しづつ理解できるようになり問題が解けるようになった【「有能さ」が満たされる】
→3.友達と一緒に勉強したり、わからないところを親や先生にきいてわかるようになってきた【「関連性」が満たされる】
→4.ちょっと難しい問題を自分で考えたら解けたり、自分で決めた学習内容を、自分なりの勉強方法で理解できるようになり、やりがいを感じるようになった【「自律性」が満たされる】

 

 やる気を出させるために

 メタ認知力」の高い子供は、上記段階のような「自分の学習をコントロール」することができます。ゲームでいうと「主人公をコントロールして育成」していきます。ドラクエなどのRPGでいうと、「いろんな人の話を聞いて必要な情報を集め、向かう場所を自分で決め、武器や魔法をそろえ、現れた敵(問題)が強敵だったら、自ら「レベル上げ」したりして。

 外発的動機づけを与えられても、内発的な動機につなげるのが難しい子供は、親や指導者の適切なサポートが必要です。このサポートは、子供の「自分で出来た感、自分で決めた感」をどれだけ念頭に置いて寄り添っていくかが非常に重要になります。強制的にやらせると「自分でやった感」がなくなるのでやる気が失せます。指導的立場の人は、「言葉」と「態度」によって子供に自己選択・自己決定・自律・自立を促していくこと が必要です。(※すべての事柄において外発的→内発的にする必要はありません。)

 

 「言葉がけ」の例として、成果が出たとき「結果を褒める」のではなく「努力したプロセス」を褒めます。

  「良い点数とれたね」
よりも、
  「努力したからできたね」
とか、さらに具体的に、
  「自作の復習ノートを毎日継続して覚えたからだね」
とか。

 また、「言葉がけ」の他の例として、

  「毎日練習してくれたこと、お母さんも嬉しいよ。学校の先生も喜んでたよ。」

などは、子供が行動したことにより「他人に貢献できたという実感」を持つことができ、モチベーションの向上につながります。

 

 「態度で示す」例としては、親や指導者は、自らも様々なことに「好奇心」を抱き、子供と一緒に学んだり教え合ったりします。先のブログで述べた、「子供がやっているゲーム」に「好奇心」を抱き、「楽しそうだね。やり方、教えてよ」って。また、例えばダイエットを目標に掲げ、コツコツ努力している姿を見せ、成果を出してみせるとか。親や指導者も常に自己研鑽に励み、その姿を子供に示すことが大切です。

 

 ほんのちょっとした言動で子供から信頼され、やる気や自信を引き出すことができるかもしれないのです。

 

 おわりに

 「自己決定理論」をとおして、子供の「動機づけ」のお話をしてきました。勉強だけでなく、習い事やスポーツにも、そして将来の仕事にも役に立つ内容なのではと感じていただけたら幸いです。このような理論があるということを知っておくこと(メタ認知すること)だけでも有用な気がします。

 やや長文になってしまいました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

shufrieren.hatenablog.com

shufrieren.hatenablog.com